失われた技術 2019 8 18

 時代が進めば、技術も進歩するとは限らない。
逆に退化する場合もある。

「FZ250フェーザーの音楽」
 時は1985年、
ヤマハのFZ250フェーザーの登場は、衝撃的だった。
 排気量が250ccなのに、
エンジンは、16バブルDOHC4気筒で、
17,000rpmの超高回転型のエンジンが45馬力を発揮しました。
これほどの高回転は、F1マシンのみだと言われたものでした。
 今は、このような高性能なエンジンはありません。
250ccのバイクのエンジンは、
せいぜい2気筒が主流となっています。
馬力も40馬力に届かないものとなっています。
 なぜ、退化してしまったのか。
実は、経済性や合理性を考えれば、
250ccでは、2気筒が妥当です。
 これを4気筒にしてしまうと、
1気筒あたり60cc程度になってしまいます。
 しかも、1気筒で4バブルとなると、
燃費効率は悪いものとなります。
 確かに、あっという間に、
エンジン回転は、10,000回転を超えますが、
スピードは出ないのです。
 しかし、サウンドが素晴らしかったのです。
まるで管楽器のような音でした。
 スピードは出ないけれど、
管楽器のような音が、市街地には、心地よいと感じました。
 後に、スズキのGSX400Rを乗りましたが、
もはやレーシングマシンの世界であり、
とうてい市街地を楽しむようなマシンではありませんでした。
 「ヤングマシン」で、
稲垣一徳氏は、現代の技術で、
4気筒250ccのエンジンを作ったら、
60馬力で20,000回転という記事を書いていますが、
もはや「失われた技術」になっていますので、
今のバイクメーカーには作れないでしょう。
 そもそも、今のバイクメーカーは、
経済性や合理性を優先して、技術者魂を失ったのです。
 さびしいことですが、
技術力で夢を見る時代は、夢物語になってしまいました。
今の日本企業は、技術力には興味がないのです。

MVX 2018 5 19
 「MVX250F」とは、ホンダのスポーツバイクのことで、
ライダーからは、「ホンダ初の失敗作」と言われ、
販売期間は、たったの1年で終了になったオートバイです。
 しかしながら、私は、「MVX」に興味を持ち、
「研究用」として保管したいと思ったぐらいでした。
 どこに興味を持ったかというと、
このバイクのエンジンは、
なんと、2ストロークのV型3気筒のエンジンだったのです。
 当時、250ccのバイクで、V型エンジンは珍しく、
さらに、3気筒も珍しかったのです。
このような排気量では、2気筒にするのが普通です。
 V型で3気筒エンジンとなると、
エンジンレイアウトが問題になります。
 2気筒を後方、1気筒を前方にするか、
その逆にするか、迷うところでしょうが、
「MVX」は、2気筒を前傾させ、1気筒を後傾させました。
 しかしながら、やはり、後傾の1気筒に負担がかかることになり、
そのうえ、2ストローク・エンジン特有の焼付き対策のために、
エンジンオイルを大量に消費させた結果、
1回走ると、後ろのナンバープレートが真っ黒になってしまうほどでした。
 エンジンの理想形は、6気筒エンジンですが、
さすがに、オートバイで6気筒にすることはできません。
大きなエンジンをオートバイに搭載できないからです。
 なぜ、ホンダは、市販車にV型3気筒エンジンを搭載したのかというと、
当時、世界オートバイレースにおいて、
V型3気筒エンジンの「NS500」が大活躍したからです。
 2気筒では、トップスピードが足りない。
4気筒にすると、エンジンが重くなり、空力の問題がある。
つまり、エンジンの横幅が大きくなり、空力が悪くなるのです。
 そこで、ホンダは、3気筒エンジンを開発して、
オートバイレースで成功したのです。
 ホンダは、4輪車においては、
比較的、優等生のような製品を作りますが、
2輪車においては、常識を破壊する製品を作ることがあります。
それが、ホンダらしさというものでしょう。
当時のホンダは、「奇人・変人」の集まりと言われたことがあります。
 さて、なぜ、私が、このような技術の話を書いたかというと、
今、日本が豊かであるのは、
強力な工業力で、優秀な製品を作り出して、
それを海外に輸出して、お金を稼いできたからです。
 日本に技術力がなくなれば、江戸時代の生活に逆戻りします。
現代風に言えば、「原油が枯れたサウジアラビア」でしょう。
 もちろん、今でも、サウジアラビアの油田は豊富ですが、
やがて、油田が枯渇する日が、やってくるのです。
その時、サウジアラビアは、「砂漠の民」に戻るでしょう。
日本も、技術力の「枯渇」を心配する必要があります。
 今、豊かであることを当然のことと考えてはいけません。
自分たちの子孫のために、新しい技術に挑戦する必要があります。
 あなたの前に道はなく、
あなたの後に道はできる。



































































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